<06/01/05> 予定事業費率
「金融庁 業法施行規則の一部改正 商品価格の弾力化促進」に関連して

ご存知のとおり、営業保険料は純保険料と付加保険料から構成されている。付加保険料は会社の運営費、外務員手数料などをまかなうものであり、保険料の重要ファクターである。
教科書的に書くと、予定事業費は三つの構成要素から生成されている
新契約費率(α)
維持費率(γ)
集金費率(β)
である。これ以外に外務員教育訓練費を入れていたり入れていなかったりで、それは各社ごとに異なるが、この三種が主な項目である。
まず、記号法であるが、新契約費率をαと書くのは大体日本のどこの会社でも同じであるが、維持費をγと書くのがN社M社系列であり、S社の系列ではこれをβとするところが多い。そして、集金費をβと書くのも同じである。いずれにしても、α・β・γといわれる事業費の系列ができている。ここでは、新契約費をα、集金費率をβ、維持費率をγと書くことにする。
αは保険金比例が多く用いられており、γも保険金比例、そしてβは保険料比例であるが、βは現在3/100が用いられている。これは団体扱いなどの集金事務手数料の上限をこれで賄う関係上3/100を下げることはできずにいる。この数値は戦後一貫して用いられていたものである。
この事業費体系については旧保険行法時代には外資系生保を除き全く同一のレートが用いられていた。外資系生保は1980年代以降、高額割引を導入するに至る。これはγを原資としてその枠内で事務費を下げようというものである。このときの説明としては、「確かに、100万円の保険契約と1億円の保険契約は手間は異なるが、その維持費として100倍金が掛かる、ということはない」という理由付けがなされた。その一方で、一件別の事業費(ポリシーフィー)の考え方は日の目を見なかった。これはその当時のα・β・γの制度に一件別の事業費制度がなじまなかったことも起因している。特にその昔は1483通達と言われた経費削減通達の対枠事業費率の考えに一件別の考え方がなかったのも一因ではないか考えられる。
ポリシーフィーとは一件別事業費であり、保険契約一件取ると保険金の多寡によらず必ずかかる経費はこれで賄おうというものである。高額割引制度は確かにこれはこれで確立した一つの考え方ではあるが、ポリシーフィー制度の一種の変形であると見ることもできる。特に高額割引の場合、保険金バンドの境目で保険料の逆転が起きることも見逃せない事実である。
また、隠れた事業費として「解約控除」がある。これの経理的計理的意義についてはもろもろ語られるところではあるが、新契約経費の回収であるということについては異論のないところであろう。
これらの予定事業費率は算出方法書の記載事項ではあったが、今般これの記載を要しなくする保険業法施行規則の改正が金融庁より案として提示されている。
その影響は大きい。特に将来的な方向性なしでは対応する保険会社は極めて対応に苦慮することになる。
(2005年11月28日 日刊 1面) 保険用語研究会