<06/02/22> 生保買取について
生命保険証券の売買は古い伝統を持っている。そもそも、エリザ・ライトが解約返戻金概念を含む不没収法を導入したのも、19世紀末英国での保険証券売買の現場を見聞したことから始まっていると言われている。
そこでは、譲渡人の足元を見た全く不公正な価格による売買が横行していたという。ライトは保険数理的に公正な解約返戻金があれば、そのような悲惨な市場が生まれることはないだろうという思想をもって解約返戻金概念を作ったといわれている。
従って、解約返戻金という概念そのものは保険制度の当初から存在したものではなく、保険監督の立場から勝ち取ったものである。
20世紀の末ごろとなって、エイズなどの不治の病に際して、尊厳死や生前にやり残したことをおこなおうという思想のもと生前給付制度が誕生した。日本でもいわゆる三大疾病商品やリビング・ニーズなどの制度の導入がその嚆矢となるものである。
しかし、米国ではその当時から保険証券の買取が行われていた。その結果、米国の生前給付は基本的にはリビング・ニーズと保険証券の買取制度であると言われていたのである。なお、米国のリビング・ニーズはナーシング・ホームへの入所も視野に入っておりその一時金計算では極めて高い死亡率で現価計算がなされているので、手取り年金額は極めて大きく、2年受け取ると保険金の大半が取得できたはずである。
今回の生命保険の権利義務の売買に関しては、リビング・ニーズに規定する状態に至ってはいないが資金需要が逼迫している保険契約者の要請に応じたものである。裁判(東京地方裁判所民事第15部平成17年11月17日判決)では原告敗訴でこの売買は実効性を失った形とはなっている(現在上訴中とのことである)。
(2006年02月02日 代理店版 3面)
特集 生命保険買取 日米の動向と展望「生保買取の現状と今後」 保険用語研究会