<06/02/27> 正味収入保険料
正味収入保険料と正味支払保険金は、損害保険会社の業績を示す指標としては最も基本的なものであるが、それぞれの意味を正確に覚えている方は意外と少ないかもしれない。ちなみに、当たり前のように使用されている用語のためか、残念ながら日刊紙面では何ら説明されていない。
正味収入保険料(net premium written)の定義を調べてみると、たとえば以下のような説明がされている。
「正味収入保険料とは、元受正味保険料に受再正味保険料を加え、支払再保険料および収入積立保険料を控除したものをいう。」
損害保険に関する知識がある程度ないと、全く理解に苦しむ表現に違いない。極々大雑把に言うと、以下のようになろう。保険契約の分類として、元受保険(保険契約者の保険リスクを保険会社が引き受ける契約)と出再保険(保険会社が引き受けた保険リスクの一部を、別の保険会社に引き受けてもらう契約)と受再保険(他の保険会社の持つ保険リスクの一部を引き受ける契約)の三つの形態があり、それぞれにおいて保険料の受け渡し、および保険事故が起これば保険金の受け渡しといったものが伴う。したがって、ある保険会社を中心において「保険料」の流れを整理すると、まず保険契約者から受領する元受保険料、他の保険会社から受領する受再保険料、そして他の保険会社に支払う出再保険料の三つになる。この保険会社にとって収入として認識できる金額は、「元受保険料+受再保険料−出再保険料」で計算され、これを指して「正味保険料」と呼ぶ場合もある。ただし、この場合の「正味」という用語の意味(再保険を加味した差し引き)と、元受正味保険料の中にある「正味」の意味とは異なるので注意が必要である。元受正味保険料の「正味」とは、収入として認識できる保険料から、たとえば解約に伴って解約返戻金などを支払った場合のその金額を差し引いた額という意味である。要するに、収入として認識できる保険料を、実際はその一部から支払われた解約返戻金なども含めて、すべてを相殺した後の金額ということになる。ところで、積立保険(貯蓄型保険)の貯蓄部分については、受領した保険料(積立保険料)を保険会社が運用して、将来に満期返戻金などとして返還するものであり、預かり金の要素が強いため収入保険料の中には含めていない。
前置きが非常に長くなったが、損害保険においては「正味」という用語が、解約返戻金等を加味して相殺したという意味と、再保険を加味して相殺したという意味の両方に使われているため、時として混乱する場合もある。さらに、「正味」の代わりに「ネット」と英単語を使う場合(特に会話の中で使われるケースが多い)もある。また、再保険の世界では、元受保険における純保険料に相当するものとして「ネット再保険料」という用語も使われているので、とにかくその場面場面で意味を取り違えないように留意することが大切であろう。
(2006年2月20日 日刊 1面) 保険用語研究会