<06/04/26> 金融商品取引法
ついに第164国会に「金融商品取引法」が登場した。これは証券取引法の一部改正という形を取った法案の提出がなされているが、結果として、昨年来の西武やライブドアの顛末から一般的に有名になった「証券取引法」という言葉が消滅する瞬間を迎えたわけである。ちなみに昨年の通常国会あたりから名前が出ていた「投資サービス法」という法律、実はこれはこの「金融商品取引法」のことである。ちなみに、日本の法律は慣例的にその表題に「サービス」のようなカタカナを望まないので法律の表題は変わるであろうとはかねてより噂されていたものである。

1996年(平成8年)の日本版金融ビッグバンのプログラムを実行するために、その法制度整備として平成10年の金融制度改革関連法といわれる法改正(1998年)が行われた。フリー・フェアー・グローバルのうたい文句であったが、このときはいわゆる銀行法・保険業法・証券取引法などの縦割りの業者ルールは温存したままで規制緩和を行うという前提があった。従って、当時から横断的な法律の設定の必要性は審議されていたがこれは実現に至らなかった。従って、そのときの審議会ではビックバン後にはそのような法制度の必要性が唱えられていたものである。
その後2000年の金融商品販売法が横断的な法制度として成立する。これは預金・証券・保険(郵貯・簡保を除く全部といってよい)など金融商品全般について金融商品販売業者(銀行、証券、保険会社などの金融機関を指す。また、媒介業者、代理業者も含む)は市場リスク・信用リスク・そして権利行使期間・解約行使期間についての説明責任を負っており、これに違反した場合は民法上の損害賠償請求の対象となるとしているものである。この法律は業界を横串に刺した横断性によって画期的な法律であるといわれている。

さて、今回の法改正は証券取引法の大規模改正ではあるが、イギリスの金融サービス法のような銀行・保険などのいわゆる業者ルール全般を飲み込んだものに一気に飛びつくものではなく、段階的な法整備の一環であると考えることができる。従って、保険業法はそのまま残ることになる。今回の法律は国民の投資意識を銀行中心のものから資本市場に振り向けるにはどうしたらよいか、という問題に対する一つの解答を与えようとしているものである。それはキャッチフレーズからその観点を垣間見ることができる。下記は平成17年12月22日の金融審議会金融分科会の第一回報告においてなされた考え方である。
1. 利用者保護の徹底
2. 貯蓄から投資へ
3. 金融・資本市場の国際化への対応

要するに、資本市場に国民の金融資産を流したいのである。その為のインフラの整備が今回の制度設定の目標といえる。
本法律の想起の段階では、柔構造化という言葉がキャッチフレーズである。証券取引法は極めてリジッドである。これをもう少し柔らかい構造にしようというものである。これは間接的に金融商品の開発提供というものに対してとイノベーションの促進を阻害することのないようにしていきたいという考え方に応えるものでもある。
そして、国民への投資教育の促進も本法案の大きなそして特徴のある骨子となっていることも見逃せない。そして、課徴金のシステムをつくり、行政が手が出ない一般上場会社をしばるために刑事制裁(民事はあまり使われない)一本やりでやっていた証券取引法に有効な制裁措置を講じている。
(2006年3月24日 日刊 3面)
保険用語研究会